マリア・デ・ブエノスアイレス [音楽]
2年前の3月、ボクは公民館のソロコンサートを終えて、がんばった自分のために、ご褒美のコンサートを予約していた。
それが「ブエノスアイレスのマリア」
アストル・ピアソラの作品のなかでも、初期の傑作とされるタンゴ・オペラだ。
ピアソラを知って、2枚目に買ったアルバムが、このマリアだった。
それから数十年、待ち望んだ公演は、東日本大震災のため中止になった。
そうなのか、と、そのとき思った。やはり、マリアを生で聴くのは無理なんだ。
あれから2年、今日、2013年6月29日、マリアは演じられた。
しかも、初演当時のマリアであるアメリータ・バルタールを迎えるという、信じられない奇跡を伴って。
どうしたら、このことをひとに伝えられるのか。
最初、歌い手も、演奏も、緊張しているのが感じられた。
でも、徐々にほぐれ、なめらかになるのが伝わり、そして、
アメリータの声は、もともとハスキーで、不思議なニュアンスに富んだものなのだが、
ほんとうにあの声が、しかも、同じ歌を歌っていても、年月を経て豊かになっているのが感じられた驚き。
そう、今日のマリアは、大人のマリアだった。
楽しみにしていたコンサートが震災で中止になったことだけでなく、
初めてマリアのレコードを聞いた高校生のときから、今までの時間が、無駄ではなかったのだと感じられた。
思いは、報われるのだ。
ピアソラ、アメリータ、小松さん、すべての出演者、今回のコンサートのために尽力されたすべての方にお礼を申し上げる。
最終章タングス・デイが終わろうとするとき、アメリータさんはマイクをスタンドに戻して、最後の音が消えるとき、手を合わせていた。
聴衆も、呆然として一瞬、拍手を忘れていた。
あの一瞬に、会場のすべてが感謝を捧げているのだと思った。
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